ムの人間関係を軸に描かれる。古山の役はブロンコさながら自分勝 手で傍若無人。チームに迷惑ばかりかけるが気にもとめない。迷惑 がられたりしている。勿論そうなる理由は色々とある。仮面で本当 の自分、自分の弱さを隠しているとも言える。倉庫兼、飛行機の製 作所兼、馬が寝泊まりしている場所、そこが舞台となっている。そ こで色々なことが起こる。ざっくりで申し訳ないが、本当に色々な ことが。彼が馬のかぶり物を脱ぐことが出来るまでの、つまり本当 の自分を晒すことが出来るまでの数ヶ月を描いた。まず発想として 馬のかぶり物を登場人物、しかも主人公にかぶらせようというのが あった。それから、じゃあどういうシュチエーションでかぶらせる か、何故馬をずっとかぶっているかという理由を考えた。試行錯誤 の結果、彼のドラマを創作し、鳥人間コンテストという設定が用い られた。全ては馬のかぶり物ありきだ。 さて、ここで僕は困っている。じゃあ、そもそも何故馬のかぶり物 なんかをかぶらせて芝居をやらせたかったか。まるで覚えていない のだ。これはモダン論を書く身としては由々しき事態だ。しかし考 えても考えても思い出せない。どうしよう。ここで今回は終わって いいのか。いいのだろうか、いいわけがない。 例えばこういうことは覚えている。北海道公演が終わり、古山に「 次もまたお前が主役な」と言った。古山は「マジですか」と、いつ もの敬語で答える。デンキ島に次ぐ連続主役、彼の表情は若干ハニ カミ王子になっていた。
第十一話「何故馬なのか」蓬莱竜太