軟でなければなりません。これは違う、これは好みじゃないと言っ たら自分が止まってしまいます」と語り、その舞台を下りた直後に 「楽しかった」と笑顔で言った。これである。これが国宝の姿であ る。頑であることも時には重要だと思う。しかし柔軟であることは もっと重要である。人間を描く、または演じる以上、作り手側に鮮 度がなければ、結局それは呼吸してないのと同じである。この世界、 呼吸をし続けることが難しい。それは実は誰もが知っていることだ。 そんなのわかってる。だからこそ、その職業を名乗るなら世界と視 野を広げる努力と思考は避けられない。自分の美学や感性という言 い方に置き換えてさぼってはいけない。天才以外はね。 作家である以上、常に柔軟である努力、世界を広げたり受け入れた りする努力、知る努力を強いられる。そうやって作家は一人、壊れ ゆく自分の肩と相談しながらも、全力投球を出来る準備をする。産 みの苦しみを分かってくれる人なんているわけがないし、必要もな い。うん、つまり孤独ということだね。誤解しないでほしいが作家 の仕事=孤独なのであって、作家=孤独ではありませんよ。 さて、僕は考えた。同じことを年二回続けていくならそれは無理だ。 必ずすぐに枯渇する。少なくとも僕は天才ではない。年二回をやる なら別のことをやらなければならない。年二回、中野ポケットで十 数人が出る芝居はむしろ自分を狭めていく。それは避ける必要があ る。年一回は番外公演として、小さい空間で少ない登場人物で芝居 を創ることにした。自分が書いたことがないこと。挑戦こそが作家
第十二話「年二回公演をやるっちゅうことはね」蓬莱竜太