う企画だ。本公演と差別化して、逆にミニマムな公演に挑戦しよう
ということだった。自分自身で目指している演劇の真逆に挑もうと
いうことでもある。それくらいあえて全く違うことをしないと、僕
にとって年二回公演は作家の寿命を縮めるものだと感じていた。今
まで考えもしなかった挑戦をすることで失うどころか得るものの方
が多いのではないか。寿命を縮めるより延命に繋がるのではないか、
そういう期待があった。結果的にその目論みは成功したと言えるか
もしれない。
さて、今までやったことのないこととは何か。狭い空間で少人数の
公演、そして役者が大事な芝居。誤解をおそれず書いたが、今まで
の芝居が役者を大事にしてこなかったわけではない。勿論大事だ。
しかし15人くらいの大人数(僕に取っては大人数)が出演する舞
台は「構成」が命になってくる。パズルである。十五人全ての役に
登場する意味がある「構成」を考える。伏線を貼る。人間関係を構
築し、壊す。伏線を回収する。観客が最初見ていた絵といつの間に
か違う絵になっている仕掛けを作る。というのは、人数が多ければ
多いほど、当然一つの役が物語に登場する時間は少なくなる。つま
りその役柄を語る時間は少なくなるのだ。「効率」が作品に必要に
なってくる。限られている時間で最大の効果を産む書き方をしなけ
ればならない。そこで必要なのは「構成」である。逆に言うと、役
は芝居のピースの一つになる。当時、僕の脚本が誉められて、役者
は評価されないということがあった。その理由の一つとして、役者
が戯曲の構成の一部にならざるを得ない、ということがあったと思
第十三話「由希」と「M」