まず続かなかった要因の一つは僕自身にある。作・演出という仕
事はやりたかったのだが、とどのつまり書きたいものが自分の中で
見つかっていなかった。書いているものが偽物、雰囲気だったとい
うことだ。ぼんやりとしているうえにブレている。そういうことを
真剣に考える発想すらなかったように思う。役者は混乱する。その
混乱を演出でカバーしようとするのだが、僕自身がブレているので
本当の言葉が出てこない。偽物、雰囲気の演出に終始してしまう。
これでは何をやっているのか、何を創っているのかもわからない。
雰囲気劇団である。あぁ書いててつらいわ。
旗揚げ公演が終わり、舞芸出身者たちが集まる忘年会があった。
トイレでの出来事である。
僕がトイレに入ると小椋さんが小便をしていた。
『あ、小椋さんだ』と心で思い、横に並び緊張気味に小便をする。
すると小便を終えた小椋さんが、
「この前の旗揚げ公演観たよ」
と話しかけてくる。
「あ、そうですか。ありがとうございます」
「あれね―」
小椋さんは僕の肩にボンと手を置き、
「面白くなかったよ」
と言い放ち、手を洗う。
「でも、眼鏡はいいのかけてるね」
第ニ話「旗揚げまでに語るべきいくつかのこと(後編)」蓬莱竜太