ただ楽しい、日常を忘れたいという質のものとは違った道に行くこ とになる。 そうすることは座長やメンバーが望んだ集団のかたちなんだろうか ?という疑問もある。だけども仕方ない。もう心は決まっているよ うなものだ。 自分が持っている感覚を特化させ、粘って書きたいと思い始めてい る。 まず高円寺の明石スタジオでは駄目だ。 僕がやりたい表現をするにはもう少し大きめの劇場が必要だ。 公演終了後、例によって座長との話し合いがある。 第四回公演は大きめの劇場でやりたいと伝えた。座長は僕の気持ち を理解してくれた。そうして中野ポケットという劇場を押さえてく れた。明石スタジオを使用していた僕たちにとっては、とても大き い劇場になる。 モダンはどうやって客を増やしたんですか?と聞かれることがある。 僕たちは動員が伴っていないのに勝手に劇場を大きくし、勝手に風 呂敷をひろげたのだ。だけど自分の表現にはどうしてもそのサイズ は必要だったのだ。結果的にはそれが動員につながる結果となった。 「自分の感覚に粘って書くのが作家だ」 僕は今でもその言葉をとても大事にしている。 こうして書いたのが「デンキ島」だった。
第七話「人生を変える言葉」蓬莱竜太