第九話「転換期。最後は運だぜ」
蓬莱竜太
「デンキ島」である。
お洒落さや知的さからおよそ離れた北陸ど真ん中芝居だ。(第八
話を読んでね)
僕たちはそれを恐る恐る、いや恐れずに、いや恐る恐る上演した。
出演者も今までの倍くらいはいたと思う。稽古も本番近くになると、
朝10時から夜10時までという今思うと大変過酷なものだった。
そこの稽古場はメインとなる稽古場以外に部屋がいくつかあり、役
者たちは自分のシーンをやっていない時は他の部屋で自主練をする。
僕はメインの部屋にずっといて、代わる代わる見ていくという方式
だ。休む暇も余裕もなかった。演出としても結構キツい言い方をし
ていたと思う。恐らく挑戦的公演であった故に、不安や恐れがそう
させたのだろう。気に入らない演技が一言でもあったらすぐに止め
て、何度もやり直させた。ある役者にはそれこそ何度も百本ノック
のようにやらせた。あまりに責め過ぎて次の日稽古場に現れなくな
ったりした。大変だった。モダンに客演すると大変だ、という噂が
いつの間にか僕のまわりでは飛び交うようになったのだが、僕は全
然ピンときてなかった。今振り返ると、そうだったろうなぁと思う。
人と造るのは昔も今も難しい。例えば僕が百本ノックをして追い
詰めたヤンキー役の俳優、彼は本当によくなかった。だから僕は追
第九話「転換期。最後は運だぜ」蓬莱竜太